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【Vol.2】約5年前の黎明期からボッチャをサポート 支援企業として業界をけん引する存在に

投稿日時:2022.2.1

株式会社CAC Holdings

金融、医薬分野などのシステム開発・運用サービスと業務受託サービスを国内外で展開するCACグループ。同グループは日本ボッチャ協会のゴールドパートナーとして活動支援を行う中、国内開催の各種大会で審判なども担当。また、ボールの距離を測るアプリを開発したり、社屋にボッチャ専用のコートを設けたりと、独自の普及活動も行っています。

知名度が低いからこそ支援したい

日本におけるボッチャ支援企業のパイオニアがCACグループ。同グループが取り組みを始めたのは2016年、創業50周年を迎えたことがきっかけです。当時代表取締役社長だった、酒匂明彦現会長を中心に、社会貢献につながる活動を展開していきたいという想いからスタートしました。

コーポレート・コミュニケーショングループ長 兼 CACグループ ボッチャ支援事務局長の酒井伊織さん

現在も同グループにおけるボッチャ関連の取り組みを統括している、株式会社CAC Holdings 経営企画部 コーポレート・コミュニケーショングループ長 兼 CACグループ ボッチャ支援事務局長の酒井伊織さんが当時を振り返ります。

「以前からスポンサーとしてパラスポーツの支援は行っていましたが、具体的な活動は何もしていませんでした。そんな中、創業50周年を迎えるにあたり、何か大きなことをやりたいと。そこで、改めて障がい者スポーツ支援という案が挙がったのが2015年の夏ごろです」(酒井さん)

では、どのスポーツを支援するか。複数の競技から検討する中、ボッチャに決めた理由は、知名度の低さが大きかったと酒井さんは言います。

「当初は社内でも、ボッチャという名称から競技内容を想起できる人がほとんどいませんでした。知名度が低いからこそ支援しがいがありますし、多くの企業支援を受けているスポーツではなかったことも決め手です」(酒井さん)

ボッチャメジャー(Androidアプリ)の画面

酒井さんはじめ社内関係者がボッチャの大会や練習の見学に訪れ、協会員や選手、その保護者とコミュニケーションを取る過程で、重度の障がい者でも競技できるボッチャの素晴らしさに感動。また、社長自身が大学時代にスポーツ関連のボランティア経験があったことも決め手でした。

支援を開始してからは、競技大会に運営ボランティアとして参加するなど、現場での活動に従事。その経験から「必要なもの」「面白いこと」を形にしていきました。

当社1階のボッチャコート

中でも特徴的なのが、自社の事業を活かして開発した、ボッチャボール間の距離を自動測定するAndroidアプリ「ボッチャメジャー」、 そして本社社屋の1階に設けた「CACボッチャコート」。このコートはアスリートの練習に使うだけでなく一般開放もしていて、予約すれば誰でも利用できます。

第1回OpenChampionshipに参加したCACグループのボランティア

ほかにも近年では、日本ボッチャ協会のゴールドパートナーとして、ボッチャ大会の主催、トップアスリートの雇用、普及活動など幅広い取り組みを実施。東京2020パラリンピック競技大会では、酒井さんを含め3名の社員が審判としてボッチャに参加。ボランティアスタッフとしても、同社の6名が東京大会で活躍しました。

パラリンピックきっかけで競技人口が急増

コロナ禍により、以前のような支援活動はできていないと言う酒井さん。ただ2021年にパラリンピックが開催できたこともあり、状況は少しずつ好転しているとか。特に10月以降は「CACボッチャコート」の貸し出しが増えたり、各種学校向けへのボッチャ体験会や講演会への招へいが増加したり。
また、コートの貸し出しに関してもパラリンピックの影響もあってか、競技人口が増えていると実感しているそうです。

競技人口の増加を実感すると言う酒井さん

「選手以外ですと、以前は同じ企業で働く方々が多く利用している印象でした。それが最近は、会社の垣根を超えた同好会など、より幅広く様々な方々が利用していると感じます。昨年の東京大会でボランティアしたことをきっかけにチームを組んだという話も聞きましたし、すそ野は確実に広がっていますね」(酒井さん)

各種大会に関しては、ボッチャの日本選手権もコロナ禍により中止となっていましたが、パラリンピック以降は再開。2021年末には、軽度の障がい者クラスによる「オープンチャンピオンシップ」の第1回が開催され、酒井さんをはじめ同社でも7人が審判やボランティアとして参加したそうです。

第3回CACカップの集合写真

そして酒井さんが「今年はやりたいです」と注力している大会が、「CACカップ」。こちらは都内の特別支援学校の生徒を対象とする、ボッチャの学生交流戦。東京で過去3回開催してわかってきたこともある中で、地方でも開催させたいと意気込みます。

「子どもへのワクチン接種が不十分であるなど課題はありますが、2022年は『CACカップ』を実現したいですね。現在予定しているのは、3月のオンラインイベントです。パラリンピックで活躍した選手をゲストに呼んで、トークセッションなどを考えています」(酒井さん)

もし「CACカップ」を地方で行う場合は、競技人口などの関係で対象者の幅を広げることも想定しているとか。例えば特別支援学校以外の教育機関を含めたり、学生に限定しなかったり。健常者も交えたインクルーシブな大会にしてもいいのでは、と模索しているそうです。

体験することが企業支援の近道

体験授業で学校訪問した際の様子(当社所属の佐藤選手と当社社員)

これからパラスポーツの振興を行うなら、まずは体験してみることがおすすめだと酒井さん。特にボッチャは基礎体力を鍛える必要がなく、道具さえあればどこでも、誰でも楽しめるスポーツです。

「障がい者と健常者とが、最も垣根なく楽しめ、競い合えるスポーツがボッチャだと思います。当社がボッチャを支援したいと思った理由にも、ボッチャならではの多様性がありますし。リオデジャネイロに東京と、パラリンピックのおかげもあって、ボッチャの知名度は高まっています。インクルーシブな大会も積極的に開催されるようになりました。体験するチャンスも増えているので、まずはその魅力に触れることが企業支援への近道だと思います」(酒井さん)

コロナ禍で始まった、オンライン体験授業の様子

一方で、今後の課題も少なくないと酒井さん。例えば海外と比べた場合の競技人口はまだまだ少ないとか。だからこそ改善していくために、企業や自治体が旗振り役となって支援していくことがボッチャの未来を明るくするのです。

若い方に興味を持っていただきたいと語る酒井さん

「これは企業支援とは別の話ですが、若い方に興味を持っていただきたいと思います。大会などへ参加すると学生ボランティアの方もよく見かけるのですが、その多くは福祉関係や医学療法士の卵など、もともとボランティア精神が豊かな方々。ボッチャに限らずですが、福祉に関する教育文化がいっそう醸成されるようになると嬉しいですね」(酒井さん)

社内で支援する場合でも、協力してくれる人をうまく巻き込むのが課題のひとつ。働きながらボランティアへの時間を割くのは簡単なことではありませんが、それでもやる価値があると酒井さん。意欲のある人が中心になって、社内にアピールしていくことが大切だと言います。

支援を始めた当初の手探りの状況から根気強く続け、「ボッチャといえばCAC」と言われるまで有名になったCACグループ。いまや世界的な大会でも審判やボランティアスタッフを担うなど、業界をけん引する存在です。その姿勢や実績は、多くの企業にとってのロールモデルとなるでしょう。

インタビューした企業

令和3年度東京都スポーツ推進企業

株式会社CAC Holdings

サイト
https://www.cac-holdings.com/

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