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プロスポーツ、パラアスリート等支援活動

【Vol.1】パラスポーツ支援企業の先駆けであり 五輪・パラ最多の選手を輩出したリーディングカンパニー

投稿日時:2022.1.1

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社

損害保険会社の大手、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社。同社は、パラアスリートを多競技から15人以上採用し、パラリンピック出場選手も多いなど、障がい者の雇用やスポーツ支援に積極的な企業のひとつです。スポーツを通じた地域貢献やスポーツ支援特設サイト「AD Challenge Support」での情宣などその活動は多岐にわたり、東京都が認定する「東京都スポーツ推進企業」では殿堂入りとなっています。

毎年アスリート雇用を継続。五輪・パラには企業で最多となる7名の選手が活躍

損害保険の大手として有名なあいおいニッセイ同和損害保険は、国内企業のなかでも特にパラアスリートの雇用や支援に積極的。2006年から続けているJWBF(一般社団法人 日本車いすバスケットボール連盟)への協賛を皮切りに、2014年にはJPSA(公益財団法人 日本パラスポーツ協会)のオフィシャルパートナーを務めるほか、障がい者スポーツ支援特設サイト「AD Challenge Support」の立ち上げ、全国各地で支援の輪を広げる取り組みなど、その活動は年々活発になっています。

経営企画部次長でスポーツチームを統括する倉田秀道さん

2006年当時のことを、同社の経営企画部次長でスポーツチームを統括する倉田秀道さんは「パラスポーツへ協賛している企業は、ほぼなかったと思います」と振り返ります。

「当社は損害保険、とりわけ自動車保険を主力商品として取り扱っています。交通事故に遭われた方への保険金支払いも大事な業務です。被害者救済を考える時、保険金支払いのほか、その後の自立支援等できないかと考えた経緯があるようです。車いすバスケットボールの選手の多くは、交通事故により車いす生活を余儀なくされたことを伺い、当社の事業との親和性もありました。また、提携先企業から車いすバスケットボールの支援のお話もいただいたようです。そのような背景により、2006年よりJWBFの協賛に至りました。」(倉田さん)

日本パラリンピアンズ協会への社員寄付

スポーツ支援への本格参入は、東京2020 オリンピック・パラリンピックの開催が決定した2013年が大きな契機となりました。翌年4月、同社は社内プロジェクトチームを組成し、同時に金融機関として初となる日本パラリンピック委員会(当時)とのオフィシャルパートナー契約を締結したのです。

「最初は大会応援が主でしたが、2015年からはアスリートの雇用も始めました。自社の仲間が選手であれば、社員の応援にもいっそう熱が入りますからね。選手を中心に据えて全社を巻き込むことにより、社内でのスポーツ振興の取組みが進展しますし、パラスポーツを通してダイバーシティやアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)への理解を深めていきたいという狙いもあります。」(倉田さん)

コロナ渦縫う情勢限でも社員が応援観戦

同社ではアスリート雇用も進展し、現在は23人の所属選手のうち社員雇用が20人。さらにそのうち16人がパラアスリート、しかも東京2020パラリンピック競技大会には7人の選手が出場しました。報道等によると、ひとつの企業で7人出場というのは最も多かったようです。

「2021年の夏は、対外的な発信以上に社内に向けての情報共有に注力しました。無観客となりましたので、TVなどの画面越しに応援しましょうと。全国の拠点はもちろん、海外の現地法人などにも英語で情宣し、国内外で同じように応援することができました。また、オンラインで壮行会や報告会なども行いました。その意味では、パラリンピックは社内の機運醸成としてよいきっかけとなりましたね。」(倉田さん)

東京パラTV応援:職場にて

上智大学連携講座

全国に拠点があるのも同社の強み。東京はもちろん、各地の拠点が地域の自治体と連携し、学校での体験授業や地域住民向けの講演会・体験会に選手を派遣するなどして、自治体主催事業(イベント)を共同で行っています。

パラスポーツ等に貢献し、東京都等様々な団体から表彰されている

その狙いは、同社の行動指針にある地域密着の具現化。自治体による地域課題に対峙、それに呼応し、地域での貢献活動につなげることです。自治体のニーズは多岐に渡るもののやはり、パラスポーツを通じたダイバーシティやアンコンシャスバイアスの理解浸透へのニーズが高く、それも狙いのひとつとなっています。協定を締結する自治体の数は全国で360都道府県・区市ほど(2021年12月現在)となっており、自治体主催事業として年間80~100回ほどイベントを行っているそうです。

東京パラリンピック出場選手

「当社はパラアスリートのほうが多いですが、選手はオリパラ分け隔てなく所属しています。そのひとりに有名なマラソンランナーの川内優輝選手がいます。たとえば川内選手が大会に出場する際にその地域で講演会や交流会等を行う『マラソンキャラバン』なども行っています。」(倉田さん) 。

パラの選手の意識改革と指導者育成・普及の変革が大切

パラスポーツ写真展

パラスポーツの支援を、企業として積極的に取り組む活動がたたえられ、「東京都スポーツ推進企業」で殿堂入りとなった同社。足がかりとなったのは2006年、その後、2014年から本格的にスポーツ支援活動を続けていますが、新たな取り組みと同様に継続も大切であり、それらをブラッシュアップして品質を高めていきたいと倉田さんは言います。

「今年度、新たに実施したことがあります。所属するオリンピック競技の選手がパラアスリートを指導して競技力向上を図るという取り組みです。パラリンピックの水泳競技に内定した選手を対象に行いました。これは、いわゆる強い選手と練習する環境をつくること、パラスポーツには指導者が不足していること、に起因しているものです。これにより、所属選手が比較的多い当社ならではの「オリパラ交流」の取り組みができたと思います。パラアスリートも刺激を受け、『もっと練習したい』『きっかけをつかめた』と意欲を見せていましたし、こうしたオリパラ交流はより活性化させて相乗効果を出していきたいと考えています。」(倉田さん)

オリンピック選手によるパラリンピック選手への指導①

オリンピック選手によるパラリンピック選手への指導②

倉田さんは早稲田大学スキー部の監督や、全日本ナショナルチーム、日本オリンピック委員会強化スタッフなどを歴任してきたスポーツ指導のプロフェッショナル。その視点からすれば、パラスポーツにおける選手強化や指導者不足は、従来路線を踏襲する傾向のある枠組みでの大きな課題のひとつだと言います。

そのためには、「選手強化の環境づくりと選手の意識改革」、「指導者育成と普及のすそ野拡大」を目指していくことが大切であり、とはいえひとつの企業が奮闘しているだけではなかなか好転しないとも言及。根本としては、選手の意識改革と指導者育成・普及に関する変革をしていくことが重要だと言います。

「2021年はパラリンピックで日本が非常に盛り上がりました。パラスポーツの認知が広まった今、この灯を絶やさずにさらに盛り上がる活動をしていかねばなりません。
私たち企業だけではなく、行政と手を取って官民一体でアクションを起こすことが必要だと思います。自治体による地域での取り組みを深め、企業としては巻き込んでいただけければより動きやすいです。それには前提としてまず関連団体の発想の展開や改革が欠かせないように思います。

車いすバスケットボール 秋田啓選手

従来のやりかたにとらわれず、新しい人材を入れるなど、意識改革から組織を変革し、そこから指導者や選手が持つ力の底上げをし、日本全体のパラスポーツがよりよい状況になっていけばと思います。それにより、官民一体でのアクションが生きるのではないかと思います。私自身も会社としても頑張っていきます。」(倉田さん)

よりよい共生社会のために企業と行政ができること

同社がスポーツ支援を本格的に開始した2014年に比べれば素地は整っており、より多くの企業がパラスポーツ支援を始めやすくなっています。倉田さんは、背伸びをせずにできることから行い、やりたいけどできないことがあればJPSAや企業間同士で連携すればよいと言います。

「自社で完遂しようと思うと、労力もコストもかかりますから、できることからコツコツという考え方でいいと思います。ただし、企業活動の一環ですので意味を持たせないといけません。たとえば、単にパラスポーツの応援という目的だけではなく、「何のためにパラスポーツを応援するのか」など。そこから障がい者雇用につなげたり、パラスポーツを通じてダイバーシティやアンコンシャスバイアスの理解を深めたりと、社会的な意義、未来の価値へつなげる意図を持って計画していただけたら。」(倉田さん)

パラスポーツ体験会の様子

東京2020パラリンピック競技大会の盛り上がりが記憶に新しい今、世間の熱はある程度落ち着いたとしても、これからの活動次第で火種をより大きくすることが可能となります。

一般的に広まった認知を興味の段階にまで深め、新型コロナの感染状況にもよりますが、大会へもっと足を運んでもらうよう、協会などの関連団体が中心となって情報発信し、歩みを止めないことが大切だと倉田さんは考えています。

 

パラスポーツ体験会の様子

他方、海外に比べると日本のパラスポーツ文化は遅れをとっています。さらにいえば、パラスポーツだけではなく、ダイバーシティへの意識も世界と日本では大きな差があることは否めません。たとえば、障がい者のスポーツ従事が当たり前の環境になっているのが海外で、そこにソフト・ハードともに大きなハードルを抱えているのが日本。

学校教育ひとつをとってみても、日本には遅れがあります。たとえば、ひと昔前の日本では一般的な学校と特別支援学校とがはっきり分けられていました。一方、海外には特別支援学校というものがあまりありません。そのため、幼児期から障がいを持った子ども同士が仲良くなったり、健常者と障がい者の子ども同士が一緒に遊んだり、スポーツをしたりという機会が日本より育まれる環境になっているのです。

所属選手によるオンライン講演会

SDGs(持続可能な開発目標)が日常的に叫ばれるようになった昨今、たとえば環境面の違いをより広く伝え、日本の当たり前は意外とグローバルスタンダードではないということを知ってもらいたい。その思いもあって、同社は文化交流や体験教育を通じて全国各地で活動を行っているのです。

「当社が雇用するアスリートは、競技だけではなく業務も担っています。所属アスリートの業務は職場のみならず、社会での活躍の場があると考えています。そのため、多くの所属アスリートは自治体主催事業の講演会や小学校の体験授業など、川内優輝選手は全国行脚の『マラソンキャラバン』の活動を展開しています。
所属アスリートのために社会での活躍の場づくりをすすめ、アスリートにはあらゆるところに活躍の場があることをわかってもらうことが必要だと思います。」

パラスポーツやアスリートを支援する企業のリーディングカンパニーである、あいおいニッセイ同和損害保険。共生社会におけるモデル企業であるとともに、誰も取り残されない社会をつくり発展させていくために。その挑戦はますます果敢に、これからも続いていきます。

インタビューした企業

令和3年度東京都スポーツ推進殿堂入り企業

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社

サイト
https://www.challenge-support.com/

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