【Vol.17】社員の健康づくりを通じて、安全安心な鉄道運行と地域活性化を実現(東武鉄道株式会社)

2024年10月16日

企業紹介

東武鉄道株式会社(墨田区)は、東京、埼玉、群馬、栃木、千葉の1都4県に鉄道網を展開する鉄道会社で、沿線距離は関東の私鉄では最長の463.3kmに及びます。
基幹事業である鉄道事業のほかに、不動産開発や流通、観光事業なども展開し、地域社会の発展に広く貢献しています。

活動紹介

東武鉄道では「安全安心な鉄道運行には、社員の心身の健康が不可欠である」との信念から、令和3年(2021年)10月に「健康宣言」を制定。職場での体操の実践、階段利用促進等による「生活習慣病予防」や「計測機器設置等による測定の習慣化」などに積極的に取り組んでいます。

同時に、沿線地域で少年野球大会・少年サッカー大会(いずれも性別に関わらず参加が可能)を後援するなど、スポーツ振興を通じた青少年の育成活動にも力を入れています。今回は、主な取組の概要やメリットなどについてお話を伺いました。

お話を伺った皆さん(左から 東武鉄道株式会社人事部課長補佐の小林哲郎さん、東武博物館館長の山田智則さん、人事部診療所副所長の小髙聖太郎さん、人事部課長の遠藤航也さん)

約50年継続!「働く人の体操」で心身をリフレッシュ

「働く人の体操」を行う社員の皆さん

東武鉄道本社では、毎日午後3時になると、オフィスフロアに軽快なメロディーが流れます。これは同社で昭和51年(1976年)から約50年にわたって行われている「働く人の体操」の始まりの合図。メロディーが始まると約600人の社員やスタッフが一斉に業務の手を止め、約3分半の間、メロディーに合わせて体操を行います。

「働く人の体操」は、デスクワークが中心の社員の運動不足解消を目的に導入されたもので、音楽・体操は公益財団法人国民健康つくり運動協会が考案したものです。
人事部課長補佐の小林哲郎さんによると、「音楽はオリジナルのものをそのまま利用していますが、体操についてはオリジナルの手順をベースに、各社員が自己流にアレンジして取り組んでいます」とのこと。立ち上がって屈伸運動をする人、座ったまま肩や首を回したり上半身を伸ばす運動をする人など、それぞれが思い思いに体操に取り組んでいます。

東武鉄道人事部課長補佐 小林さん

「ベースとなる体操を意識しつつも、その日の体調や気分に合わせて思い思いに体を動かせばよいとされているので、体操の順番などを正確に覚えていなくても無理なく取り組むことができます。この良い意味での『気軽さ』が約50年間もこの体操が続いている理由の一つかもしれません」と小林さん。

東武鉄道人事部課長 遠藤さん

人事部課長の遠藤航也さんも、「新入社員のときは、15時になるといきなり音楽が流れて周囲が一斉に体操を始めるので驚きましたが、先輩社員に基本的な動きを教わって見よう見まねで行っているうちに、すっかり体操が毎日の習慣に。
今では15時になってメロディーが流れると、ごく自然に立ち上がって運動をするようになりました」と振り返ります。
「ほんの3分半ですが、体操のリフレッシュ効果は絶大です。特に業務に煮詰まっているときなどは、体操をすると良い気分転換ができるので、結果的に業務の効率化にも繋がっているのではないかと思います」。

健康意識を醸成、自己管理が可能な職場環境を目指す

社内に設置している血圧計

東武鉄道では、健康体操以外にも社員が日常的に健康意識を醸成できる仕組みを整えています。その中の1つが、各職場への計測機器(血圧計、体重計)の設置と「血圧・体重記録帳」の配布です。

東武鉄道人事部診療所副所長 小髙さん

人事部診療所副所長の小髙聖太郎さんは、「計測・記録の習慣化は健康管理の基本。習慣を身に付けると、自身の健康状態への関心が高まるので体調の変化に気付きやすくなり、結果として病気や不調の早期発見・早期治療に繋がります」と説明します。
一定の条件を満たした社員にはインセンティブを与えるなどして、計測・記録の習慣化を促しています。その甲斐あって、2023年には全社員の約3割が血圧・体重の記録を実践しているそうです。

「血圧・体重記録帳」を社員全員に配布

このほか、オフィス内の階段に1段上るごとに消費できるカロリーの目安を表記。エレベーターを使わずに階段で移動するメリットを実感しやすくすることで、日常的な運動不足解消を促しています。

階段に消費カロリーを表記し、利用を促す

スポーツ振興を通じて沿線の子どもたちの健やかな成長に貢献

サッカー大会

また、沿線地域での取り組みとして、東武博物館主催のもと、平成20年(2008年)度から、スポーツ振興を通じた青少年の健全育成等を目的として、東武鉄道杯少年野球大会・少年サッカー大会を開催しています。
大会の運営は、東武鉄道社員のボランティアによって支えられており、少年野球大会では参加選手に小児用PASMOを贈呈するなどして、開催地への移動を通じた公共交通機関利用にあたってのマナー啓発にも取り組んでいます。

社内のボランティアスタッフによる設営の様子

 

野球大会

東武博物館の山田智則館長は、「大会は東武鉄道の沿線を地区ごとに分けて(野球3大会、サッカー4大会)行い、さらに各地区の優勝チーム等は中央選手権大会に出場できます。1都4県のチームが一堂に会する中央選手権大会は、いわば「関東大会」のような規模で行われ、通常の地区大会では対戦できないチームと戦えることもあって、子どもたちには憧れの大会でもあり、お互いの地域に興味・関心を持つきっかけともなっているようです。」

「また、当社の社員にとっては沿線の子どもたちと直接交流できる貴重な機会であると同時に、スポーツの魅力を再認識する機会でもあります。これからもスポーツを通じて沿線の輪を広げ、子どもたちの健やかな成長に貢献できるよう活動の充実を図っていきます」と話しています。

東武博物館館長 山田さん

スポーツ大会の表彰式

また、本大会は子どもたちが東武鉄道への興味・関心を持つきっかけとしても、大きな役割を果たしています。
人事部課長の遠藤さんによると、「大会の表彰式では、沿線の駅長等からメダルを授与しているのですが、後日、子どもたちが駅を表敬訪問してくれるなど、大会後の交流にも繋がっています。大会の思い出とともに、駅員を始めとした社員との交流の思い出が、東武鉄道への愛着に繋がったのか、同大会への出場経験のある子どもが成長して、当社に入社するケースも珍しくありません」とのこと。

「私たち社員もボランティアとして本大会に参加できることを楽しみにしています。いきいきとプレーする子どもたちの笑顔からパワーをももらい、やりがいを感じながら大会運営をサポートしています」。

健康経営とスポーツ振興を通じて、持続可能な経営を目指す

東武鉄道では、2021年に制定した健康宣言の中でも、「社員が心身ともに健康でいきいきと働くこと」が、企業の持続的な成長にも繋がっているとしており、東武鉄道グループの中期経営計画2024~2027においても、「健康で長く働き続けられる環境整備の継続」を計画の一つに掲げています。

遠藤さんは、「鉄道の安全安心な運行には社員の心身の健康、そして沿線の皆様のご理解とご協力が不可欠です。引き続き会社と社員が一丸となって、社員の心身の健康づくりに積極的に取り組むとともに、スポーツ振興を通じた沿線地域の皆様との交流、地域活性化に取り組んでまいります」と話しています。


【Vol.16】従業員の心身の健康に貢献する新しい働き方とは?(株式会社イトーキ)

2024年7月16日

企業紹介

株式会社イトーキ(東京都中央区)はオフィス家具の製造販売、オフィス空間デザイン、オフィスコンサルティングなどを手掛ける企業です。『明日の「働く」を、デザインする。』をミッションステートメントに掲げ、オフィスのほか在宅ワーク、公共施設や物流施設など、さまざまな「空間」「環境」「場」づくりをサポートしています。

活動紹介

お話を伺った株式会社イトーキ人事部長の大井卓爾さん、産業保健師の大森彩華さん

イトーキでは2017年に「健康経営宣言」を策定、社内の健康に関する担当部門によって組織横断的に構成された「健康経営推進委員会」を中心に従業員がより健康的に働くためのさまざまな活動に取り組んでいます。今回は本社オフィスで実践している新しい働き方「XORK Style(ゾーク・スタイル)」の概要やメリットについて、同社人事部長の大井卓爾さんと産業保健師の大森彩華さんにお話を伺いました。

目的に応じて働く場所が変えられるオフィス

イトーキが実践する新しい働き方「XORK Style」は、従業員の裁量を最大化し、従業員が自らの働き方を自律的にデザインするスタイル。そのベースとなるのが「Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング、以下ABW)※」です。ABWとは、原則として従業員はオフィス内に固定席を持たず、その時々の仕事内容や相手に応じて、最も生産性が高く働ける場所を従業員自身が選択する働き方のこと。

ABWの実践の場となっているのが、2018年に完成したイトーキの本社オフィス「ITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)」です。3フロアにわたるオフィス内には、例えば「個人で集中して作業したい」、「ウェブ会議をしたい」、「みんなでアイデアを出し合いたい」といったニーズに適した、さまざまなタイプのワーキングスペースが用意されています。

「例えば、午前中はウェブ会議に集中したいから個人用ブースに、午後からはグループでアイデア出しをしたいからオープンスペースに集まる、といった具合に、目的に応じてオフィス内を移動します。1日に複数のスペースを移動しながら働くことも珍しくないため、オフィスから一歩も出ない日でも、気が付けば結構な距離を歩いていますね」と大井さん。以前、他の会社で働いていた頃に比べて、日中の運動量がかなり増えたことを実感しているそうです。なお、個人情報の取扱いに同意が得られた社員の位置情報はオンラインでリアルタイムに確認できるほか、オフィスの活用によるさまざまなデータが可視化されています。

オフィスの稼働状況がリアルタイムに分かるRealtime Office Viewer(リアルタイムオフィスビューワー)

働きながら活動量を増やす「仕掛け」が随所に

オフィス内では、日常的な行動が自然に歩数アップや健康的な活動につながるように、次のような環境も整えられています。

■フロアを繋ぐ中階段の設置

3フロア(ビルの11F~13F)に分かれているオフィスをつなぐ、吹き抜けの中階段を設置。従業員がエレベーターを使わずに徒歩でフロア間を移動できるようにしている。

■ゴミステーションの設置

個人用のゴミ箱は設置せず、各フロアに設置されたゴミステーションを利用することで、「ゴミを捨てる」という日常的な行動が自然と歩数アップにつながるよう工夫されている。

■上下昇降デスク・テーブルの設置

高さを調整できるデスクやテーブルを各所に設置。立ったままミーティングやパソコン操作ができるようにして、いわゆる「座りっぱなし」を防いでいる。

3フロアをつなぐ中階段

クローズドブースのデスクと椅子の高さも複数用意

こういった取組が功を奏し、従業員の行動や意識にも少しずつ変化が現れているといいます。
「イトーキでは従業員のパフォーマンスを可視化するPerformance Trail(パフォーマンストレイル)というアンケートサービスを提供しており、年に1回、自社従業員にも実施しています。直近のアンケート結果を見ると、イトーキの従業員の身体活動のスコア(業務中に身体を動かしたかどうかを測るスコア)は46.8ポイントと、全国平均(42ポイント)を上回っています」と大森さんは強調します。

また、健康に配慮されたオフィス環境は、従業員のイトーキへのエンゲージメント(愛着、帰属意識)にも大きく影響を与えています。大井さんによると、オフィス改修前は40~50%で推移していたエンゲージメント調査結果は、オフィス移転後もより良い環境を目指してオフィス投資を重ねた結果、直近では約74%にまで上昇しているそうです。

オフィス内での移動が「偶発的なコミュニケーション」のきっかけに

オープンな雰囲気のオフィス

「XORK Style」は、従業員の身体活動量増加だけでなく、他にもさまざまな効果を生んでいます。
大井さんが特に実感しているのは、従業員同士の偶発的なコミュニケーションがとりやすくなったこと。「オフィス内を移動する機会が増えるので、他の従業員と偶然に顔を合わせる機会も増えます。そのときにちょっとした立ち話をすることが、すごく良いコミュニケーションになるんですよね。お互いの近況報告もできて、それが新しいアイデアのきっかけになることもあります」とのこと。

「仕事で煮詰まっているときにはオフィス内を歩くことも、気分転換になりますね。業務中の従業員の自然な様子をさりげなく観察できるのもXORK Styleのメリットの一つと感じます。いつもと様子が違うなと感じたら気軽に声を掛けたり対話用のワークプレイスも活用できますから、身体だけでなくメンタル面でも従業員の健康をサポートしやすい設計だと実感しています」。

また、オフィス内に設けられた「健康推進室」には、産業保健師が常駐しています。大森さんは、「健康推進室内には、体組成計や血圧計も常備しており、従業員は自由に利用できます。休養室のほかにカウンセリングルームも設けていますので、勤務時間中ならいつでも、心身の健康に関する相談ができる体制を整えています」と説明します。

「オフィスワーカーが健康的に働ける社会」の実現に貢献したい

このように、さまざまな効果を生んでいる「ITOKI TOKYO XORK」ですが、開設から5年以上経った今も進化を続けています。
「オフィス家具の販売やオフィス関連サービスの提供を手掛ける当社にとって、本社オフィスは一種の実証実験の場でもあります。実際にオフィスを使っている従業員から上がってくる『こうすれば、もっと使いやすいのではないか?』、『こんな取組をやってみたい』といった提言やアイデアを反映して、常により生産性の上がるオフィスを目指してリニューアルを重ねています。その意味で、当オフィスは永遠に進化し続けるオフィスだと言えます」と大井さん。

このほか、「健康活動報奨金」制度や従業員向けの運動イベント等の企画・実行も積極的に行っているイトーキ。今後の目標について大井さんは、「引き続き積極的に従業員が健康的に働ける環境の整備に取り組み、その成果を製品やサービスに落とし込む努力を通じて、オフィスワーカーが健康的に働ける社会の実現に貢献していきたい」と話しています。

※オランダのワークスタイル変革コンサルティング企業 Veldhoen+Companyの研究により作られた考え方です。イトーキは同企業とABW(Activity Based Working)のビジネス展開について業務提携を結んでいます。


【Vol.15】健康経営で切り開く、エンターテインメントの未来(株式会社コロプラ)

2024年3月29日

企業紹介

株式会社コロプラ(東京都港区)は、スマートフォン向けのアプリゲームやコンシューマーゲーム、メタバースなどを手掛けるゲーム会社です。「Entertainment in Real Life」をミッションに、何気ない日常を、エンターテインメントで希望と活力に満ちた世の中にすることを目指しています。

(左から)お話を伺った、菅井健太取締役、藤澤潔さん、佐藤昭平さん

活動紹介

最新のテクノロジーとアイデアを掛け合わせ、ユーザーに新しい体験を届けるコロプラ社では、菅井取締役をトップに「健康経営チーム」を発足させ、社員の健康増進やスポーツ分野での社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。
今回は、エンターテインメントになぜ健康経営が必要なのか、その理由ついてお話を伺いました。

部活動の推進~部署を超えた交流で、より面白いゲームを届ける~

ゲーム制作の現場では、デザイナーやエンジニアをはじめ、プランナー、サウンドなど様々な職種が、それぞれの専門知識とスキルを活かして、協力しながら制作することが必要不可欠です。そのためコロプラ社では、部署の垣根を超えたコミュニケーションの活性化を目指して、部活動の発足を推進しています。部活動の立ち上げには、異なる部署の社員が入部することを条件として 、他部署との交流を図れる場となるよう工夫し、部員には毎月1000円の活動費を支給しているそうです。現在、27種類の部活動に約200人が参加しており、そのうち、運動部は皇居ラン部やラジオ体操部などの7種類があります。

ラジオ体操部が中心となり、毎朝ラジオ体操を行っています。出社の社員だけでなく、在宅勤務者もオンラインで参加し、運動習慣が促進される機会となっています

ウォーキングイベント「歩フェス」(あるフェス)で社員の運動不足解消へ

他団体主催のウォーキングイベントへの参加もコロプラが行う健康増進イベントの1つです。アプリを使用し、一定期間の歩数を競うイベントで、一般の社員から役員まで約200人が参加しています。しかし、歩数を競い合うだけでは順位が固定化してしまいます。そこで、社員のモチベーションを維持できるよう、コロプラ社独自企画(歩フェス)も開催。役員の順位当てクイズや同社ゲーム名にかけた白猫黒猫賞、ピタリ賞などゲーム会社ならではのわくわくする仕掛けを取り入れながら、社員が積極的に参加して健康維持に取り組めるよう工夫を凝らしています。

 
仕事柄、勤務時間中は長時間椅子に座ってパソコンに向き合うため、1日ほとんど歩かない日も多いとのこと。さらに、コロナ禍で増加したテレワークも運動不足の原因となっています。『こうした取組により社員の運動不足を解消したい。』と菅井取締役は考えています。

「『面白いものを作りたい』という社員共通の想いを追求するため、ベースとなる『健康』を支える」と語る菅井取締役

社員が働きやすい環境の構築

コロプラ社では部活動やイベントの他にも、社員の健康増進を目指してユニークな取組を行っています。ここではその中の3つを紹介します。

  • 感染予防に特化したオフィス環境の整備
    コロナ禍をきっかけに、厚生労働省が換気の目安として示している「一人当たり毎時30㎥の換気量」を満たせるように、換気を増強。床には病院でも使用される抗ウイルス素材のリノリウムを採用し、汚れにくいよう工夫をするなど、接触感染、飛沫感染、空気感染それぞれに対応する対策を施しています。
  • 「KumaSPA」
    長時間の作業で疲れた体を癒す、国家資格を持つヘルスキーパーが常駐する専用のマッサージルーム「KumaSPA」を社内に設置しています。社員は週に1回、就業時間内に誰でも無料で受けることができるそうです。
  • 無限バナナ
    バナナが無料で無限に食べられるスペースを設置。バナナは栄養価が高く、皮に包まれているため衛生的で、「(週末には)無限なのに全てなくなるほど人気です」とのこと。

HR本部長として社員が安心して働ける環境づくりに取り組む佐藤さん。「こうした健康経営の活動の成果か、社員の健康診断の結果も改善傾向にある」とのこと。

世界で活躍するパラアスリートを多数雇用

スポーツゲームも手掛けるコロプラ社は、健康増進を目的とするスポーツの実践だけでなく、スポーツを通じた社会貢献活動も行っており、2018年からパラアスリートの雇用を促進しています。現在7名のアスリートを雇用しており、各アスリートが競技に専念できる環境を提供し、社として活動をバックアップしています。

現在人事部で働かれている藤澤さんも、もとはパラアスリート雇用の社員で、東京2020パラリンピック競技大会の車いすバスケットボール競技に日本代表として出場し、銀メダルを獲得した選手です。藤澤さんは、「アスリート雇用であっても、競技に専念できる環境を提供していただける例はあまり多くないため、ありがたかったです。」と語ってくださいました。
コロプラ社では、今後アスリート引退後のキャリアも支援していく方針で、菅井取締役は、「アスリート個々人のキャリアではあるので、個人の意思を尊重しつつ希望があれば社員として働ける環境を用意し、セカンドキャリアをサポートしていく。」と話してくださいました。

「東京2020パラリンピック競技大会」に出場したコロプラアスリートのユニフォーム

アスリートの活動はブログで社内に発信し、社員が応援に行くなど、社員のパラスポーツへの理解を深める取組にもつながっています。アスリート社員による講演会やパラスポーツの出前授業も実施し、選手の活躍や選手自身をタッチポイントとして使うことで社内の一体感に繋がっているそうです。

新たなエンターテインメント創造に向けて

多くのユーザーに楽しんでもらえるエンターテインメントを提供し続けるために、従業員の健康とパフォーマンスの維持を積極的に働きかけるコロプラ社。
「面白いゲームを作りたい」という共通の想いを推進するため、健康経営が重要な柱の一つとなっています。

今後も「歩フェス」(あるフェス)や部活動へ参加する社員を増やし、社員が普段から健康を意識して生活できるようサポートを継続する考えのようです。
菅井取締役は、「良いクリエイティブやゲームを作る上で、最後の踏ん張りに健康が重要な要素。我々が作ったきっかけを社員が活かしてくれると嬉しい」と語ってくださいました。


【Vol.14】廃棄品を利用した意外なアイデアで、パラスポーツも鉄骨業界も笑顔に(池田鉄工㈱)

2024年2月8日

企業紹介

創業73年の池田鉄工株式会社(東京都杉並区)は、一般及び集合住宅、オフィスビル、工場、倉庫、その他各種鉄骨工事などを取り扱う鉄骨業者です。工場での鉄骨製造と現場での組み立てを一貫して行い、全てオーダーメイドで建物の骨組みを手掛けています。お話をお伺いした池田和隆代表取締役お話をお伺いした池田和隆代表取締役

銅を車いすに変える社会貢献活動のきっかけ

池田鉄工は、パラスポーツで使用する車いす等を寄贈する社会貢献活動に参加されています。今回はこの取組みを中心に、社内で行っている健康経営も含めて池田和隆代表取締役にお話しをお伺いしました。

池田鉄工は、全国鐵鋼工業協会青年部会(以下、全青会)が2017年から取組んでいる「ノズルチップ活動」に参加しています。本来であれば捨ててしまう、溶接作業でどうしても発生する消耗した銅製ノズルチップ。それに着目し、数多く集めれば、さらに価値あるものになると発想し、全国の仲間で集めて換金。そのお金で、車いすを購入して寄贈しています。
2023年に寄贈した車いすバスケットボール用車いす2023年に寄贈した車いすバスケットボール用車いすノズルチップノズルチップ

全青会では、

  • 全国の仲間が一つの事業を達成するために団結力を養うため
  • 寄贈することによる団体のPR活動の一環として行う
  • 自社の社員への教育の一環

の3つを目的として、全青会の全国大会が行われる開催地の施設や教会、NPO法人に、一般の車いすや競技用車いすの寄贈をしています。
池田代表取締役は、「障がい者の手助けになり、車いすが子供たちの教育になれば」という想いで1回目の会議からこの活動に賛同し、率先して参加されています。

これまでの寄贈実績

全青会による車いすの寄贈は、主に全国大会開催地の社会福祉協議会へ行っています。ですが、2020年の京都大会から新型コロナウィルス感染拡大により全国大会開催ができなくなり、寄贈先をどうするか検討した際、「東京2020パラリンピック競技大会」が開催されることと、「活動を辞めたくない」という想いから、2021年から2年間、日本パラ陸上連盟と、日本車いすテニス協会に、競技用車いすを寄贈しました。また2023年には、NPO法人パラキャンが行うパラ競技体験イベントのために、車いすバスケットボール用の車いすも寄贈しました。

NPO法人パラキャンへ寄贈した車いすバスケットボール用車いすNPO法人パラキャンへ寄贈した車いすバスケットボール用車いす

一石三鳥「皆の笑顔、社会貢献、業界PR」

銅を集めて換金する作業は手間がかかるため、初めはネガティブな意見も多かったそうですが、池田代表取締役は15期(2020~2021年度)の会長を務めるなど、精力的に活動されました。そうした中で、寄贈先から、感謝の寄せ書きや体験会で使われている写真が届いているそうです。

「手間はかかりますが、皆が喜んでくれるというのが一番です。皆で集めることに意義があって、社会貢献ができて業界のPRにも繋がるので、一石三鳥ぐらいだと思っています」と話してくださいました。

寄贈先から届いた感謝の寄せ書き寄贈先から届いた感謝の寄せ書き

「手間はかかりますが、皆が喜んでくれるというのが一番です。皆で集めることに意義があって、社会貢献ができて業界のPRにも繋がるので、一石三鳥ぐらいだと思っています」と話してくださいました。

支援活動について語る池田代表取締役支援活動について語る池田代表取締役

池田鉄工が取り組む健康経営

池田代表取締役には、従業員向けのスポーツ促進の取組についてもお話をお伺いました。池田鉄工では、「体が資本」の社員のために、毎朝のラジオ体操を実施、また筋力トレーニングスペースを設置し、日々の健康経営にも力いれています。トレーニングスペースは、約200蔓延かけてトレーニングマシンを整備したそうです。卓球台もあり、昼や業務後に社員の方が汗を流しています。
「鉄骨業は危険な作業が多いため、ラジオ体操でリフレッシュして体を鍛えることは、作業の安全性を高めるとともに社員のモチベーションに繋がります。」(池田代表取締役)

ラジオ体操の様子ラジオ体操の様子

トレーニングスペースは今は使わなくなった現寸場※を有効活用トレーニングスペースは今は使わなくなった現寸場※を有効活用

「日本の建築技術は世界一」、業界の未来に対する想い

鉄骨業界は、人材不足により技術の継承も課題となっています。池田代表取締役は銅を車いすに変えるノズルチップ活動などを通じた業界PRや、健康経営・ライフワークバランスへの配慮など社員満足度を高めることで、課題解決の糸口を模索しています。
「日本の建築技術は世界一。その一翼を我々が担っている自負がある。これをきっかけに知ってもらい、若い人に鉄骨業界へ入ってもらって技術を繋いでいきたい」と語ってくださいました。

 

 


【Vol.13】アスリート雇用がもたらしたものとは?デフアスリート土屋選手と企業の挑戦(T&Dフィナンシャル生命保険㈱)

2023年12月15日

企業紹介

T&Dフィナンシャル生命保険株式会社(以下、TDF)は、東京都港区芝浦に本社を置く生命保険会社です。「お客さまやパートナーとていねいに向き合い、選ばれる会社へ」を経営ビジョンに、多様な保険商品を通じてお客さまの人生に豊かさと安心を提供しています。

TDFのデフアスリート支援~デフフットサル土屋選手の採用~

今回は、スポーツ推進企業であるTDF様に、パラアスリート支援の取組を中心に、お話をお伺いしました。
TDFでは、デフフットサルの土屋祐輝選手を「アスリート雇用」という形で採用しています。デフアスリートを雇用しようと思った理由についてTDFの伴さんは、「(TDFでは)従業員が健康でイキイキと活躍できるよう、健康宣言を策定しています。障がいのある方々のスポーツを支援することで、健康と社会への貢献が出来ると考えました。」と話してくださいました。

※デフ(Deaf)は、英語で「耳が聞こえない」という意味。土屋祐輝選手土屋祐輝選手

土屋選手の挑戦。障がいを越えたフィールドでの躍動

では、土屋選手は、どのような方なのでしょうか。ご本人にお聞きしてみました。

聴覚障がいのある土屋選手は、幼い頃から徐々に聞こえにくくなったそうで、現在はほとんどの音が聞こえず、話す人の口の動きを読んで言葉を理解されているそうです。
サッカーを始めたのは6歳のときで、高校1年生まで健常者のチームでプレーし、大学卒業後にデフサッカーに転向しました。デフサッカーとデフフットサルでは、他の選手の声が聞こえないため、視覚に頼って情報を集める必要があります。幼少期に話し言葉を音で習得されており、手話を使わずに、ご自身でお話しされる土屋選手。インタビュー時の質問にも、とても丁寧にお答えくださいました。幼少期に話し言葉を音で習得されており、手話を使わずに、ご自身でお話しされる土屋選手。インタビュー時の質問にも、とても丁寧にお答えくださいました。

 

土屋選手は週に2回、健常者も集まるフットサルチームと一緒に練習を励んでいます。健常者とのプレーを、どのように感じていらっしゃるのかをお聞きしたところ、音を頼りにしたコミュニケーションが取れないことでとても大きなハンデを感じるとのこと。しかし、土屋選手はこの壁を乗り越えるため、常に努力を続けています。「高いレベルのプレーが求められるチームでは、声を出してのコミュニケーションが特に重要になります。その分、私は他の面で貢献し、誰よりも多く走り、誰よりも積極的に声を出してプレーすることを心がけています。」と話してくださいました。フットサルをプレーする土屋選手フットサルをプレーする土屋選手

 

その努力により、土屋選手は、デフフットサルの国際大会のメンバーとして世界での活躍を続けています。
2023年5月にイランで開催された「アジア太平洋ろう者フットサル選手権」では3位に輝き、11月にブラジルで開催された「デフフットサルワールドカップ」では、銅メダルを獲得しています。

 

職場での土屋選手

土屋選手の、職場での様子について、お話をお伺いしました。

普段の仕事では、メール室業務や会計業務、広報を担当されています。職場では口話でのコミュニケーションで仕事を行っていますが、チャットを使って仕事ができるので、より働きやすい職場環境となっているそうです。取材中も、同僚の皆さんと和気あいあいと、明るく答えてくださる土屋選手取材中も、同僚の皆さんと和気あいあいと、明るく答えてくださる土屋選手

 

アスリート活動とTDFの全面支援

TDFでは、初めて聴覚障がいを持つアスリートを雇用したことで、最初はどのようにサポートするのがよいか、戸惑うこともありましたが、今では土屋選手の活躍が社員にとってのエネルギー源になっています。土屋選手の活躍が社内ブログで紹介されると、社内の活気に繋がり、会社全体で応援する雰囲気が高まっています。11月に行われたデフフットサルワールドカップ前の壮行会の様子11月に行われたデフフットサルワールドカップ前の壮行会の様子

 

また、TDFでは、土屋選手が合宿や遠征に参加できるよう、サポートしています。前職はアスリート雇用ではなかった土屋選手は、「スポーツに理解のある職場で働くことができ、今こうして活動出来ていることがとても幸せです。」と話してくださいました。

社内交流イベントでコミュニケーション強化~デフフットサルで結ぶ絆~

TDFでは、社員とその家族が土屋選手を含む代表選手と一緒にデフフットサルを楽しめるイベントを開催しています。こうしたイベントを通して、体を動かす機会を提供するとともに、障がい者スポーツへの理解を促進しています。さらに、土屋選手推奨のストレッチを社内ブログで紹介、デフフットサルイベントを開催するなど、健康促進と社員間の交流を図っています。代表選手と一緒にフットサルができる交流イベント代表選手と一緒にフットサルができる交流イベント

 

社員のお子さんも一緒にボールを使ってフットサルを体験社員のお子さんも一緒にボールを使ってフットサルを体験

 

目指せ2024冬季デフリンピック

2024年の冬季デフリンピックでは、デフフットサルが正式種目に追加される予定とのことです。TDFは、これからも土屋選手とデフスポーツの発展を支援していく方針で、日本ろう者サッカー協会のオフィシャルパートナーとしても支援を続けています。その一歩が、土屋選手の一歩、そしてデフスポーツ界の一歩に繋がっています。お話を伺ったT&Dフィナンシャル生命保険会社の皆さんお話を伺ったT&Dフィナンシャル生命保険会社の皆さん


【Vol.12】社員のライフワークバランスを追求し、「お客様のために」の実現を目指す(㈱ライフィ)

2023年8月31日

企業紹介

2000年設立の株式会社ライフィ(東京都港区三田)はWebサイトでの情報提供、お客様相談、法人リスクコンサルティングが主な事業の総合保険乗合代理店です。約60社と提携し、生命保険、損害保険、少額短期保険を取り扱っています。

健康経営のきっかけ

ライフワークバランスプロジェクトリーダー Tさん(システム部)

「真心を込めた良質な情報提供を通し、和をもって、係る全ての人の成長・幸せ・未来に寄与する」を経営理念にしているライフィ。「お客様と真剣に向き合うためには、まず従業員の健康から」と考え、2019年から健康経営をスタートしました。社員が主体となりプロジェクトチームを立ち上げ、出勤社員・リモートワーク社員の両方が働きやすくなるような、健康経営を目指しています。

ストレッチタイム写真

ストレッチタイムに取り組む社員

毎日のストレッチや、オンラインで同時に行うラジオ体操

椅子に座って仕事に励む社員の体をほぐすため、毎日15時にストレッチタイムが行われています。15時になると社内でクラシック音楽が流れ始め、リラックスしながら各々ストレッチを行います。在宅勤務の社員も同じ時間帯に行っています。

また、毎週月曜日と木曜日の朝礼後には、出勤社員・リモートワーク社員全体でラジオ体操も行っています。社員からも「やると結構気持ちがいい」と評判で、全体実施以外の日にも社内で午前9時55分から取組んでいるとのことです。

ウォーキングなど運動の習慣化

厚生労働省が定めている健康づくりの指標一日8000歩を目安に、歩数競争を行っています。目標を達成した社員には会社からクオカードなどが贈呈されます。

▽歩数を稼ぐことが楽しくなる

歩数の記録は、社員全員に支給されている、スマートウォッチタイプのウェアラブル端末「FITBIT」を使います。歩数を記録する楽しさが増え、以前はタクシーを使っていた場面でも歩数を稼ぐために歩くようになったといいます。

「普段から歩いていたので、それが認めてもらえてかつ賞品も貰えるので取組意欲もあがりました。FITIBはスマホアプリも使えるので、体重管理をして16キロも体重が落ち、健康面の効果が特にありました。」

▽コミュニケーションのきっかけとなる

歩数はプロジェクトチームが集計し、社員なら誰でも閲覧することができます。頑張りを可視化することでモチベーション向上にも役立ちます。記入されている歩数が多いと、「どこか(旅行やアクティビティなど)行ったの?」や「(ウォーキングの)おすすめのコースはある?」など、社員同士の話のタネにもなり、コミュニケーションが増える波及効果もありました。

「結果が公表されると、周りから『頑張ったね』と褒められることもあります。次第にさらなる目標にもチャレンジするようになりました。」

「一人だと諦めたり三日坊主になったりしますが、みんなで競い合える楽しさがあります。歩数競争の話題を、普段話すことのなかった人とのお酒のつまみにするなど会話も増えました。オンとオフのメリハリがついて、目標を達成することで仕事も上手くいっています。」

トライし続け、繋がった運動習慣

今では順調そうに見えるライフィの健康経営。ところが、運動が社員に広く習慣化し始めたのは、仕組みを変えてからだと言います。初めはチームで統一した目標を決めて、歩数を競争していたことがあったそう。しかし、日常の運動量には個人差があるため、それでは人によっては敷居が高すぎて、取り組む前から「達成できない」と諦めてしまう例もありました。そこで、社内アンケートなどで社員の声を聞き、今では、社員それぞれが自分で歩数目標値を決める方法へと変更しました。社員の運動意識に合った取組になるよう、施策を何度も改善し、運動が習慣づくようトライし続けています。

松本専務取締役「チーム戦が失敗だったかというわけではなく、その時も競争が生まれて盛り上がりました。その流れがあってこそ、今の取組が恒例になっています。」

今後の展望~打ち上げ花火ではなく、社の文化になるように~

「取組を通して、運動を習慣化できたことが最大の成果です。」と松本専務取締役。
プロジェクトチームへの加入は、立候補制で毎年変わります。任意とはいえ、普段の業務と並行して行わなくてはいけないので、決してラクな役割とは言えません。しかし、チームに加わることで社員の意識が連動して、よりよい方向に変わっていく。それを文化に、これからも社員が自分のために健康を意識できる環境を投げかけ続けたいと、松本専務取締役は話してくださいました。

松本専務取締役「花火を打ち上げるわけではなく、地味に、地味に継続していく。それがお客様に繋がると思う。」

令和4年度東京都スポーツ推進企業認定証

健康経営が認められ受賞した賞状

健康経営で社員はいきいきと仕事に励んでいる

2019年東京ライフワーク・バランスEXPOで大賞を受賞し、小池百合子都知事からトロフィーを受け取った。2023年は東京ライフ・ワーク・バランス認定企業に選ばれた。


【Vol.11】健康経営を武器に、2024年問題に挑む(サイショウ・エクスプレス㈱)

2023年7月26日

企業紹介

創業68年のサイショウ・エクスプレス株式会社(東京都江東区)は、一般貨物自動車運送業と倉庫業を手がけており、従業員は36人、東京ドームや有明アリーナなどでイベント機材の搬送を主な業務としています。

お話を伺ったサイショウ・エクスプレス株式会社の皆様

健康経営のきっかけ

齋藤敦士代表取締役

新3Kの「綺麗・健康・かっこいい」を考案、スローガンに掲げる齋藤敦士代表取締役が「健康経営」に着手したのは、身近な家族のご不幸を経験されたことから。健康の大切さを痛感し、2017年1月から「SAISHO健康プロジェクト」を立ち上げました。
トラックドライバーを中心に社員の健康増進を図るため、健康教室や社内ウォーキング、トラック内で行えるエクササイズ、骨盤矯正トレーニングなど、オリジナリティあふれる取組を行っています。

 

健康プロジェクト(SAISHO健康プロジェクト)スタート
「半年で限界」「健康管理士との出会い」

自動販売機の商品を健康商品へ変えたり、血圧計を設置したり、社内ウォーキング活動を行うなど、齋藤代表取締役が手探りでスタートした健康プロジェクト。
ただ、トラックドライバーである社員の意識をすぐに変えることは容易ではなく、また、医療的なアプローチができないことも重なって「半年で限界を感じた」そうです。
そこで出会ったのが、今でも二人三脚で健康経営に取り組む健康管理士の方。のちに健康体制の構築を目指す「SAISHO健康プロジェクト」立ち上げのきっかけにもなった人材で、従業員の健康不安解決や健康診断後の再検査率100%の達成など、日々進化を遂げている現在の健康経営につながっています。

ゴールは、従業員の運動習慣の定着

齋藤代表取締役は、従業員の運動の習慣化を健康経営の最終目標としています。ですが、「社員の意識を変えるのにハードルが最も高いのが禁煙と運動です。」と、今でも悪戦苦闘しているとのこと。
特に、従業員の大半が働き盛りの40代のため、運動する時間がなかなか取れず、運動習慣構築に向けたムード作りが難しい課題です。業務の合間でウォーキング大会に参加してもらっても、ドライバーの従業員は夜間配送もあって「疲れる」という声が上がってきたこともあったそうです。

社員が使えるリラックススペースも社内に用意

禁煙補助具も社内に完備している

はじめた斬新な取り組み~運転しながら健康になる!

東京都スポーツ推進企業の認定企業が使える、「Enjoy Sportsカタログ」を利用し、トレーナーの方に実際にトラック内部を見てもらって考案したエクササイズ。
トラックの運転席でも行えることが特徴で、齋藤代表取締役によると「長時間同じ姿勢でいると血流が悪くなる。安全運転のためにも、足を使うことや脳と目の疲れをとることを意識した。」とのこと。休憩の合間のほかにも、ミーティング前や入社式などの行事で行っているそうです。

 

骨盤矯正トレーニング

骨盤矯正トレーニングはトラックの荷台を使って行います。トレーナーの方のオンライン講習を受けながら、効果的なトレーニングを行うことができます。

トラックの荷台を使う斬新なアイデア

健康経営を始めて約7年「効果を実感」

2021年からは、毎日30分間、清掃活動にも従業員全員で取り組まれています。それまでは腰痛で出社できない従業員もいましたが、エクササイズ等、健康経営との相乗効果もあってこの時期から腰痛での欠勤者の人数が減っているそう。
「社風として、清掃とストレッチを行うことで風通しもよくなり、従業員の理解も向上し始めている」とのことです。

「運転中に『疲れたな』と感じたら、会社からLINEでエクササイズ動画が送られてくるので、その中から選んで行えるところもいい」

「運転中に『疲れたな』と感じたら、会社からLINEでエクササイズ動画が送られてくるので、その中から選んで行えるところもいい」

想い
~プロスポーツ選手ならぬプロトラックドライバーへ~

 

齋藤代表取締役「健康経営からの社会貢献、地域貢献がブランディング。そこから一流の運送会社、選ばれる運送会社をめざしていきたい。」

今後の構想は、プロスポーツ選手ならぬプロドライバーの育成。管理栄養士やボディケア専門の人材を雇い、ドライバーを中心に従業員へプロスポーツ選手並みのケアを行うことで「トラックに乗って健康になる」を実現していきたいとのことです。
新型コロナの影響で深刻化したドライバー不足も健康経営が安心感につながり、改善傾向にあるとのこと。

ドライバーの健康増進とキャリア改善、物流の2024年問題解決に向けてこれからも健康経営を軸に進化を遂げていかれることでしょう。

令和4年度東京都スポーツ推進企業認定証 2018年度から、推進企業になっている

社内の一角には、健康経営が認められて受賞した賞状がずらりと飾られている

令和4年11月「第11回健康寿命をのばそう!AWARD」の厚生労働大臣優秀賞」受賞


【Vol.10】掛け合わせの発想で スポーツ活動が無限に広がる

2023年3月31日

【お話しいただいた方】
株式会社パソナグループ
常務執行役員HR本部長 金澤真理さん
株式会社パソナ
スポーツメイト事業責任者 菊池康平さん

2015年度から8年連続で「東京都スポーツ推進企業認定制度」に認定を受けている株式会社パソナグループ。
2021年度には、スポーツを通じてあらゆる人々の支援、社会貢献に取り組んだことが評価され「令和3年度東京都スポーツ推進モデル企業」に選定されました。
自社内でのスポーツ推進はもちろん、地域社会やスポーツ業界にまで広がる同社の先進的な取組をご紹介します。

企業紹介
社会課題に向き合う総合人材サービス企業

株式会社パソナグループは、1976年に創業。子育てを終えてもう一度働きたいと願う主婦に再就職先を紹介する人材派遣事業からスタートし、以来BPO・アウトソーシングサービス、HRコンサルティング、教育・研修、地方創生ソリューションなど総合人材サービスへと事業を広げてきました。
現在は業界のリーディングカンパニーとして「株式会社パソナ」を中心に国内・海外約50社で人材ビジネスを展開。また、兵庫県淡路島をはじめ全国各地で「人材誘致」による地方創生事業を展開し、夢ある新産業の創造、地域の活性化と雇用創造に取り組んでいます。
『社会の問題点を解決する』を企業理念に据える同社では、様々な分野の課題解決に取り組んでいます。例えば『地方創生』では、全国で自治体や地元企業、地域の方々と連携しながら地域の活性化と雇用創造に挑戦。また『健康経営』についてもグループ一丸となって取り組み「健康経営銘柄2023」にも選出されるなど、心身ともに健康で心豊かな生活の実現を目指しつつ、自社だけでなく取引先企業に対しても伴走型のサポートで健康推進サービスを提供しています。
インタビューに応えていただいた金澤真理さん(左)と菊池康平さん(右)インタビューに応えていただいた金澤真理さん(左)と菊池康平さん(右)

活動の背景・経緯
4つのテーマとスポーツを掛け合わせる

同社のスポーツ推進活動の大きな特徴は、『キャリア』『社会貢献』『健康』『コミュニケーション』の各テーマを『スポーツ』と掛け合わせ、様々な機会を創出し、実践していることです。
「私たちは人を活かし、誰もがイキイキと働ける社会の実現を目指している企業です。社員が心身ともに健康であることは、企業の評価や成長につながります。企業の責任として、社員や地域の方々の健康のため、スポーツ推進に積極的に取り組んでいます。」と話すのは同社常務執行役員HR本部長の金澤さんです。
「スポーツを介して形成されるコミュニケーションは、社員のエンゲージメントの向上にもつながることから、当社ではスポーツや健康づくりを推進し、また取引先である企業の健康経営のサポートも行っています」(金澤さん)。
株式会社パソナグループ 常務執行役員HR本部長 金澤真理さん株式会社パソナグループ 常務執行役員HR本部長 金澤真理さん

同社がスポーツ推進に力を入れ始めたのは、アスリートのキャリア支援を目的とする『スポーツメイト事業』を発足させた2005年から。スポーツ活動に取り組むだけでなく、スポーツの人材育成、社員の健康や社会貢献につなげるといった考え方のもと、『スポーツ×キャリア』『スポーツ×社会貢献』『スポーツ×健康』『スポーツ×コミュニケーション』をテーマに、幅広く活動を展開しています。

活動紹介その1
アスリートの今と今後を支援

『スポーツ×キャリア』のテーマで取り組んでいるのが、アスリート社員の雇用と人材育成です。目標達成に向けた高い意識、優れたコミュニケーション能力など、アスリート社員はビジネス界でも貴重な人材と言えます。同社のスポーツメイト事業は、アスリートの競技活動と仕事の両立を目指す『ハイブリッドキャリア』(複線的なキャリア)や引退後の『セカンドキャリア』の支援を行っています。
株式会社パソナ スポーツメイト事業責任者 菊池康平さん株式会社パソナ スポーツメイト事業責任者 菊池康平さん

同事業部で研修講師を務め、元プロサッカー選手で5人制サッカーの世界大会にも出場経験がある菊池さんはこのように話します。
「当社では、現役および引退後のアスリートやコーチ等を対象に、将来を見据えたキャリア形成を考える『アスリートキャリア支援プログラム』を提供しています。全国の拠点で就労機会を提供するとともに、社会人としてのビジネスマナーやビジネスの基礎など、現役中に身につけておきたいスキルが学べる研修を提供しています。アスリートは、引退すると何もわからないまま社会に取り込まれてしまい、本人の意志と就職先との間でミスマッチが起きてしまうことがあります。そこで、研修プログラムに参加してもらい、自分の適性にあった業務を見つけ、その後実際に業務についてもらっています」(菊池さん)。
「研修プログラム」では、競技と並行して仕事のスキルが身につき、引退後のケアも行う内容となっていて、選手のライフプランに合わせたキャリアを構築しています。
女子ラグビー選手 兼 オフィスワークのハイブリッドキャリアを実現女子ラグビー選手 兼 オフィスワークのハイブリッドキャリアを実現

『アスリートキャリア支援プログラム』(外部リンク)
https://www.pasonagroup.co.jp/recruit/athlete/

アスリート支援を包括的に支援

アスリートのキャリア支援の幅をさらに広げ、より包括的に対応していこうという試みが一般社団法人日本バレーボールリーグ機構以下 (Vリーグ機構)との連携です。同社では、2022年10月、Vリーグ機構と『パートナーシップ協定』を締結し、チームに所属する選手やコーチのキャリア構築を支援する活動や社会貢献活動等を開始しました。
「Vリーグ機構は男女合わせて全国に53チーム(※)あり、アスリートの中にはビジネスススキルを身につけたい方や就労だけを希望する方もいます。また、社会貢献活動に取り組みたい方など様々です。今後もそういう方々へ、セカンドキャリアを見据えた研修を提供したり、一緒にコラボして地域を盛り上げたり、ビーチクリーンといった社会貢献活動を一緒にできればと思っています」(菊池さん)。

(※)2022-23シーズン加盟チーム DIVISION1 (V1)、DIVISION2 (V2)、DIVISION3 (V3)の合計数

一般社員もスポーツでキャリア支援

同社はアスリートだけでなく、一般社員に対してもユニークなキャリア支援を行っています。新入社員を対象とした『タグラグビー』もそのひとつです。
『タグラグビー』とは身体の接触プレーを排除した安全に楽しめるラグビーです。課題解決能力を高めたり、チームビルディングを行う際に参考にしているそうです。みんなで体を動かし、協力してプレーする中で、普段では見られない新たな面が見られるとのこと。
新入社員の教育やキャリア構築に有効な取り組みとなっています。

活動紹介その2
地域・環境・スポーツをつないで社会貢献

『スポーツ×社会貢献』のテーマでは、例えば、全国各地でジョギングしながら道路のゴミ拾いをする『ブロキング活動』や『ビーチクリーン活動』を実施。社会貢献活動の一環として推進されています。
同社所属のアスリートコーチ・草野 歩さんは、ビーチバレーボール選手としてオリンピックを目指したアスリートです。2021年の春、同社グループ社員とその家族、地域の方々が70名ほど集まり、草野さんと一緒に『ビーチクリーン&ビーチボール体験教室』を実施したそうです。
「草野さんは、アスリート社員として採用させていただきましたが、現役中から大学院博士課程でコーチング学も習得し、現在ではアスリートキャリア支援プログラムへの研修活動にも参加しています。まさにハイブリッドキャリアを実践しています」(金澤さん)。

他にも、同社では身体に障害を持つ方と健常者が一緒にプレーする車いすテニスの大会『エンジェルテニスカップ』も開催。大会は、同社役員・社員からの募金やボランティアで運営され、大会の趣旨に賛同する企業からも多くの支援をいただいて開催しています。この大会は1993年から継続していて、障害者に対する理解を深め、活動機会を作ることに貢献しています。(コロナ禍に伴い2020年から休止中)

ビーチクリーン&ビーチボール体験教室の様子ビーチクリーン&ビーチボール体験教室の様子

活動紹介その3
『スポーツ×健康』で社員に運動習慣を

社員の皆さんがイキイキと働ける環境づくりに取り組む同社では、健康経営に対する方針のもと、独自の運動・エクササイズを導入しています。
「当社では毎日朝礼を実施しています。その際、役員と社員が一緒になって体を動かす『パソナ体操』を実施しています。当社専門のトレーナーや保健師、社員有志が最も効率的に体を動かすにはどうしたらいいか検討を重ねて作り上げた当社オリジナルの体操です」(金澤さん)。
そのほか、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けたテレワークの推進に伴い、保健師・管理栄養士・トレーナーで力を合わせて『オンラインエクササイズ』を考案し、運動不足やコミュニケーション不足の課題に対応しています。また、仕事の合間や就業後に利用できる、社員向けの福利厚生施設としてスポーツジムを常設しているそうです。仕事で忙しい中でも気軽に運動ができる環境を提供し、社員一人ひとりが心身ともに健康でイキイキと働くことができるようにサポートしているとのこと。

パソナ体操の様子パソナ体操の様子
トレーニングジムの様子トレーニングジムの様子

その他の活動
企業と地域社会を巻き込む大運動会

『スポーツ×コミュニケーション』は、人が集まるすべてのイベントに関わるテーマと言えますが、中でも大規模なイベントが、兵庫県淡路市(国営明石海峡公園)で行われる『UNDOKAI WORLD CUP』です。2022年は11月3日~6日の4日間で実施され、延べ約75,000人が参加しました。
『UNDOKAI WORLD CUP 2022』の様子『UNDOKAI WORLD CUP 2022』の様子

「新型コロナウイルス感染拡大の影響で昨年度は中止となりましたが、今年度は、3年ぶりに開催することができました。今回は470社の企業から協賛・賛助いただき、企業のご家族や地域住民の皆様にも参加していただきました。大玉転がしや障害物競走など、日本ならではの種目が多く、子どもから大人まで、みんなが楽しめるイベントとなりました」(金澤さん)。
『誰でも参加できる、世界で一つだけの運動会』をコンセプトに実施される大運動会。スポーツを通じて心身を育む機会であることはもちろん、企業間の交流や地域社会への貢献など、複合的な効果が生まれています。
「スポーツは、老若男女を問わないコミュニケーションツールのひとつだと思っておりますので、今後も大会を通して人々が心身ともに健康であり続ける社会の実現を目指していきたいです」(金澤さん)。

スポーツに様々なテーマを掛け合わせ、活動の領域を広げてきたパソナグループ。今後も事業の可能性が益々広がっていくことでしょう。

インタビューの様子インタビューの様子

『UNDOKAI WORLD CUP』(外部リンク)
https://undokaiwc.com/


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