【Vol.10】掛け合わせの発想で スポーツ活動が無限に広がる

2023年3月31日

【お話しいただいた方】
株式会社パソナグループ
常務執行役員HR本部長 金澤真理さん
株式会社パソナ
スポーツメイト事業責任者 菊池康平さん

2015年度から8年連続で「東京都スポーツ推進企業認定制度」に認定を受けている株式会社パソナグループ。
2021年度には、スポーツを通じてあらゆる人々の支援、社会貢献に取り組んだことが評価され「令和3年度東京都スポーツ推進モデル企業」に選定されました。
自社内でのスポーツ推進はもちろん、地域社会やスポーツ業界にまで広がる同社の先進的な取組をご紹介します。

企業紹介
社会課題に向き合う総合人材サービス企業

株式会社パソナグループは、1976年に創業。子育てを終えてもう一度働きたいと願う主婦に再就職先を紹介する人材派遣事業からスタートし、以来BPO・アウトソーシングサービス、HRコンサルティング、教育・研修、地方創生ソリューションなど総合人材サービスへと事業を広げてきました。
現在は業界のリーディングカンパニーとして「株式会社パソナ」を中心に国内・海外約50社で人材ビジネスを展開。また、兵庫県淡路島をはじめ全国各地で「人材誘致」による地方創生事業を展開し、夢ある新産業の創造、地域の活性化と雇用創造に取り組んでいます。
『社会の問題点を解決する』を企業理念に据える同社では、様々な分野の課題解決に取り組んでいます。例えば『地方創生』では、全国で自治体や地元企業、地域の方々と連携しながら地域の活性化と雇用創造に挑戦。また『健康経営』についてもグループ一丸となって取り組み「健康経営銘柄2023」にも選出されるなど、心身ともに健康で心豊かな生活の実現を目指しつつ、自社だけでなく取引先企業に対しても伴走型のサポートで健康推進サービスを提供しています。
インタビューに応えていただいた金澤真理さん(左)と菊池康平さん(右)インタビューに応えていただいた金澤真理さん(左)と菊池康平さん(右)

活動の背景・経緯
4つのテーマとスポーツを掛け合わせる

同社のスポーツ推進活動の大きな特徴は、『キャリア』『社会貢献』『健康』『コミュニケーション』の各テーマを『スポーツ』と掛け合わせ、様々な機会を創出し、実践していることです。
「私たちは人を活かし、誰もがイキイキと働ける社会の実現を目指している企業です。社員が心身ともに健康であることは、企業の評価や成長につながります。企業の責任として、社員や地域の方々の健康のため、スポーツ推進に積極的に取り組んでいます。」と話すのは同社常務執行役員HR本部長の金澤さんです。
「スポーツを介して形成されるコミュニケーションは、社員のエンゲージメントの向上にもつながることから、当社ではスポーツや健康づくりを推進し、また取引先である企業の健康経営のサポートも行っています」(金澤さん)。
株式会社パソナグループ 常務執行役員HR本部長 金澤真理さん株式会社パソナグループ 常務執行役員HR本部長 金澤真理さん

同社がスポーツ推進に力を入れ始めたのは、アスリートのキャリア支援を目的とする『スポーツメイト事業』を発足させた2005年から。スポーツ活動に取り組むだけでなく、スポーツの人材育成、社員の健康や社会貢献につなげるといった考え方のもと、『スポーツ×キャリア』『スポーツ×社会貢献』『スポーツ×健康』『スポーツ×コミュニケーション』をテーマに、幅広く活動を展開しています。

活動紹介その1
アスリートの今と今後を支援

『スポーツ×キャリア』のテーマで取り組んでいるのが、アスリート社員の雇用と人材育成です。目標達成に向けた高い意識、優れたコミュニケーション能力など、アスリート社員はビジネス界でも貴重な人材と言えます。同社のスポーツメイト事業は、アスリートの競技活動と仕事の両立を目指す『ハイブリッドキャリア』(複線的なキャリア)や引退後の『セカンドキャリア』の支援を行っています。
株式会社パソナ スポーツメイト事業責任者 菊池康平さん株式会社パソナ スポーツメイト事業責任者 菊池康平さん

同事業部で研修講師を務め、元プロサッカー選手で5人制サッカーの世界大会にも出場経験がある菊池さんはこのように話します。
「当社では、現役および引退後のアスリートやコーチ等を対象に、将来を見据えたキャリア形成を考える『アスリートキャリア支援プログラム』を提供しています。全国の拠点で就労機会を提供するとともに、社会人としてのビジネスマナーやビジネスの基礎など、現役中に身につけておきたいスキルが学べる研修を提供しています。アスリートは、引退すると何もわからないまま社会に取り込まれてしまい、本人の意志と就職先との間でミスマッチが起きてしまうことがあります。そこで、研修プログラムに参加してもらい、自分の適性にあった業務を見つけ、その後実際に業務についてもらっています」(菊池さん)。
「研修プログラム」では、競技と並行して仕事のスキルが身につき、引退後のケアも行う内容となっていて、選手のライフプランに合わせたキャリアを構築しています。
女子ラグビー選手 兼 オフィスワークのハイブリッドキャリアを実現女子ラグビー選手 兼 オフィスワークのハイブリッドキャリアを実現

『アスリートキャリア支援プログラム』(外部リンク)
https://www.pasonagroup.co.jp/recruit/athlete/

アスリート支援を包括的に支援

アスリートのキャリア支援の幅をさらに広げ、より包括的に対応していこうという試みが一般社団法人日本バレーボールリーグ機構以下 (Vリーグ機構)との連携です。同社では、2022年10月、Vリーグ機構と『パートナーシップ協定』を締結し、チームに所属する選手やコーチのキャリア構築を支援する活動や社会貢献活動等を開始しました。
「Vリーグ機構は男女合わせて全国に53チーム(※)あり、アスリートの中にはビジネスススキルを身につけたい方や就労だけを希望する方もいます。また、社会貢献活動に取り組みたい方など様々です。今後もそういう方々へ、セカンドキャリアを見据えた研修を提供したり、一緒にコラボして地域を盛り上げたり、ビーチクリーンといった社会貢献活動を一緒にできればと思っています」(菊池さん)。

(※)2022-23シーズン加盟チーム DIVISION1 (V1)、DIVISION2 (V2)、DIVISION3 (V3)の合計数

一般社員もスポーツでキャリア支援

同社はアスリートだけでなく、一般社員に対してもユニークなキャリア支援を行っています。新入社員を対象とした『タグラグビー』もそのひとつです。
『タグラグビー』とは身体の接触プレーを排除した安全に楽しめるラグビーです。課題解決能力を高めたり、チームビルディングを行う際に参考にしているそうです。みんなで体を動かし、協力してプレーする中で、普段では見られない新たな面が見られるとのこと。
新入社員の教育やキャリア構築に有効な取り組みとなっています。

活動紹介その2
地域・環境・スポーツをつないで社会貢献

『スポーツ×社会貢献』のテーマでは、例えば、全国各地でジョギングしながら道路のゴミ拾いをする『ブロキング活動』や『ビーチクリーン活動』を実施。社会貢献活動の一環として推進されています。
同社所属のアスリートコーチ・草野 歩さんは、ビーチバレーボール選手としてオリンピックを目指したアスリートです。2021年の春、同社グループ社員とその家族、地域の方々が70名ほど集まり、草野さんと一緒に『ビーチクリーン&ビーチボール体験教室』を実施したそうです。
「草野さんは、アスリート社員として採用させていただきましたが、現役中から大学院博士課程でコーチング学も習得し、現在ではアスリートキャリア支援プログラムへの研修活動にも参加しています。まさにハイブリッドキャリアを実践しています」(金澤さん)。

他にも、同社では身体に障害を持つ方と健常者が一緒にプレーする車いすテニスの大会『エンジェルテニスカップ』も開催。大会は、同社役員・社員からの募金やボランティアで運営され、大会の趣旨に賛同する企業からも多くの支援をいただいて開催しています。この大会は1993年から継続していて、障害者に対する理解を深め、活動機会を作ることに貢献しています。(コロナ禍に伴い2020年から休止中)

ビーチクリーン&ビーチボール体験教室の様子ビーチクリーン&ビーチボール体験教室の様子

活動紹介その3
『スポーツ×健康』で社員に運動習慣を

社員の皆さんがイキイキと働ける環境づくりに取り組む同社では、健康経営に対する方針のもと、独自の運動・エクササイズを導入しています。
「当社では毎日朝礼を実施しています。その際、役員と社員が一緒になって体を動かす『パソナ体操』を実施しています。当社専門のトレーナーや保健師、社員有志が最も効率的に体を動かすにはどうしたらいいか検討を重ねて作り上げた当社オリジナルの体操です」(金澤さん)。
そのほか、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けたテレワークの推進に伴い、保健師・管理栄養士・トレーナーで力を合わせて『オンラインエクササイズ』を考案し、運動不足やコミュニケーション不足の課題に対応しています。また、仕事の合間や就業後に利用できる、社員向けの福利厚生施設としてスポーツジムを常設しているそうです。仕事で忙しい中でも気軽に運動ができる環境を提供し、社員一人ひとりが心身ともに健康でイキイキと働くことができるようにサポートしているとのこと。

パソナ体操の様子パソナ体操の様子
トレーニングジムの様子トレーニングジムの様子

その他の活動
企業と地域社会を巻き込む大運動会

『スポーツ×コミュニケーション』は、人が集まるすべてのイベントに関わるテーマと言えますが、中でも大規模なイベントが、兵庫県淡路市(国営明石海峡公園)で行われる『UNDOKAI WORLD CUP』です。2022年は11月3日~6日の4日間で実施され、延べ約75,000人が参加しました。
『UNDOKAI WORLD CUP 2022』の様子『UNDOKAI WORLD CUP 2022』の様子

「新型コロナウイルス感染拡大の影響で昨年度は中止となりましたが、今年度は、3年ぶりに開催することができました。今回は470社の企業から協賛・賛助いただき、企業のご家族や地域住民の皆様にも参加していただきました。大玉転がしや障害物競走など、日本ならではの種目が多く、子どもから大人まで、みんなが楽しめるイベントとなりました」(金澤さん)。
『誰でも参加できる、世界で一つだけの運動会』をコンセプトに実施される大運動会。スポーツを通じて心身を育む機会であることはもちろん、企業間の交流や地域社会への貢献など、複合的な効果が生まれています。
「スポーツは、老若男女を問わないコミュニケーションツールのひとつだと思っておりますので、今後も大会を通して人々が心身ともに健康であり続ける社会の実現を目指していきたいです」(金澤さん)。

スポーツに様々なテーマを掛け合わせ、活動の領域を広げてきたパソナグループ。今後も事業の可能性が益々広がっていくことでしょう。

インタビューの様子インタビューの様子

『UNDOKAI WORLD CUP』(外部リンク)
https://undokaiwc.com/


【Vol.07】スポーツイベントと健康管理、 社員と企業の成長を支える多彩な活動

2023年3月10日

【お話しいただいた方】
株式会社シンカーミクセル
代表取締役/CEO 櫻井孝志さん
津田梨央さん

株式会社シンカーミクセルは、スポーツを継続実施したい社内有志により、2006年に「スポーツ推進プロジェクト」を立ち上げ、現在年間30以上のスポーツイベントを実施しています。
新卒社員と先輩社員の交流の場として最近は、グループ会社や内定者にも声をかけ、コミュニケーションの機会を創出。「社風形成」「社内コミュニケーションの活性化」「社員の健康促進」に効果を上げています。

インタビューに応えていただいた櫻井孝志さん(右)津田梨央さん(左)インタビューに応えていただいた櫻井孝志さん(右)津田梨央さん(左)

企業紹介
25種類の認定・アワードを保有する独立系SI企業

株式会社シンカーミクセルは、企業の経営上の問題を、IT技術を駆使して総合的に解決するサービス等を提供する企業です。グループの中でも数社は社員のほぼ全てを新卒で採用していること、また従業員に占める女性の割合が約50%と業種別平均を大幅に超えていること、外部審査機関が認定・認証する資格やアワードを25種類も保有していることなどが特徴に挙げられます。
「当社は企業の情報システムに関わる問題を適切に治療し、予防していくITの総合病院のような存在です」と話すのは代表取締役/CEOの櫻井さんです。
コングロマリット経営(多業種グループ会社)や株式公開など、グループ全体の成長・発展を目指し、事業活動への取組はもちろん、企業ブランドイメージを向上させる様々な社会貢献活動、健康・スポーツ活動を展開しています。

株式会社シンカーミクセル 代表取締役/CEO 櫻井孝志さん株式会社シンカーミクセル 代表取締役/CEO 櫻井孝志さん

活動の背景・経緯
スポーツ選手の夢、企業経営の夢

「幼少期からプロ野球選手になりたくて、スポーツに打ち込んできましたが、ケガを負ってしまい断念しました。その後、学生の頃に将来自ら会社を立ち上げて、様々な業種の企業集団をつくり上げたいという夢を抱きまして、以来その実現に向けて事業を続けています」(櫻井さん)。
櫻井さんは、システムエンジニアとして多くの大手企業のシステム開発プロジェクトに携わり、会社を成長させてきました。その一方で中小企業としての経営状況を客観的に証明するために、ISO認証や資格・アワードの所得・登録に積極的に取り組んでいます。
「東京都スポーツ推進企業認定制度を知りまして、当社テーマである“健康管理/企業医療のコンセプト”にも合致したことからぜひ申請したいと思いました」(櫻井さん)。
同社は、2015年から連続で「東京都スポーツ推進企業」の認定を受けています。

取得してきた認証・資格・アワードを掲示取得してきた認証・資格・アワードを掲示

活動紹介その1
社員から東京マラソン参加の提案

東京ミッドタウン(六本木)に本社を構えた頃、テナントを対象とした運動会やマラソン、フットサル大会のスポーツイベントや、『東京マラソン』に社員が参加し、完走を果たすことなどをきっかけとして、スポーツ活動に積極的に取り組むようになりました。
「ミッドタウン六本木にて、毎年開催されるスポーツイベントに参加しています。過去には約40社が競い合う運動会で第3位になったこともあります。『東京マラソン』については社員からエントリーしましょう!という声が挙がったことから参加を始め、2022年までで約40名の社員がチャレンジして全員が完走しています。他にも『企業対抗駅伝』にも2度ほど参加していますね」(櫻井さん)。

東京マラソンに参加した社員のシューズ東京マラソンに参加した社員のシューズ(タイムを正確に記録するための計測チップ)

企業対抗駅伝の様子企業対抗駅伝の様子

活動紹介その2
様々なウォーキングイベントに参加

同社は、IT業界の健康保険組合(以下「ITS」という。)が主催する野球大会(ITS軟式野球大会)や『スマ歩ウォーク(歩Fes.)』と呼ばれるウォーキングイベントに継続参加しています。
『スマ歩ウォーク(歩Fes.)』は、歩数やチームのランキングをスマホで確認できるイベント。
2022年春(2022年5月1日~31日まで)では、全員で8,778,188歩を完歩し、その距離は日本からスリランカまでとのこと。同社の社内報に参加者の感想や写真を掲載し、動画でも紹介されました。
他にも、スマホを持って歩くだけで地域名産品が当たるアプリや、自動販売機と連動したウォーキングアプリ(歩数を稼ぐと自動販売機の商品がもらえる)を活用して、楽しみながらウォーキングできる工夫を積極的に取り入れています。

自動販売機と連動したウォーキングアプリ自動販売機と連動したウォーキングアプリ

ITS野球大会の様子ITS野球大会の様子

活動紹介その3
社内に2つのプロジェクトチーム

「私は45年間、IT業界におりますが、エンジニアの就業形態は“客先常駐”という働き方へと変化してきました。社員の勤務先はお客様の現場になるため、自社への帰属意識は薄くなります。そこで当社は、様々なクラブ活動やイベントを開催し、社員に参加を促すことで帰属意識を高めていきたいと考えています」(櫻井さん)。
同社は、社内に『スポーツ推進プロジェクト』と『カルチャー推進プロジェクト』を起ち上げ、多種多様なクラブ活動を発足しました。スポーツ系クラブは、テニスや自転車、バスケット、バレーボール、ゴルフ、バイク・ツーリング、野球など多彩です。
同社のスポーツ推進活動は、前述のウォーキングイベント、そしてクラブ活動のほか、社内報にスポーツ推進メンバーによる『スポーツコラム』(自宅でできる運動など紹介)の掲載や、『社内wiki』(情報やナレッジを共有するツール)を社員に公開し、運動の啓発や促進に力を入れています。スポーツの実践と情報共有で、社員同士の一体感を醸成するとともに、スポーツへの参加、健康管理へのモチベーションを高めています。

活動紹介その4
社員の健康を支えるヨガと産業医

企業医療をテーマに、健康管理事業も展開する同社では、社員の健康意識の向上と健康管理に向けた取組にも力を入れています。インストラクターによるヨガ教室や産業医による健康カウンセリングもその一環です。
「IT企業に勤める皆さんは、座っている時間がとても長い。ストレッチなどの軽い運動やテレワーク中にもできる運動を紹介しようと、月例(全社)会議にインストラクターを招聘し座ったまま出来るストレッチを実施したり、動画を撮影しての配信企画もあります。実は当社グループには産業医が3名おりまして、社員は、健康診断の結果次第で経過観察など、カウンセリングやアドバイスが受けられます」(櫻井さん)。
これらの取組がITSから評価され、同社は『健康優良企業』として認定されています。

インタビューの様子インタビューの様子

今後の活動に向けて
トレーニングと健康を職場の中心に置く

「当社は企業医療に関連した事業にも力を入れておりまして、その一環として健康やスポーツを取り入れた自社の活動を更に拡大する方針です。例えば、当社が主催する経営塾のテーマに健康管理を取り入れ、経営者が勉強できる機会を提供する場を設け、将来的にオフィスを拡張して、そのスペースにトレーニングジムを設置し、トレーナーを常駐させたいと思っています。そこには学校のように保健室も設置する計画です」(櫻井さん)。
同社は、IT企業40社が参画する中小企業のセーフティーネット『xPOINT21』を運営しています。将来的にはこの団体の合同運動会も実施したいと計画を進めているそうです。

その他メッセージ
ステークホルダーと一緒になって健康づくり

様々な活動に取り組む同社ですが、なぜスポーツや健康に力を入れるのか、大切にしたい思いについて伺いました。
「自分が野球やスポーツへの夢や興味があったことで、事業を通じながら継続して取り組んでいますが、実は家族が重い病気にかかってしまった経験もあり、以来、健康への意識は高まっていきました。健康に自信がある人でも気づかないうちに病気にかかったりします。しかし、日頃から健康管理していれば早期発見、早期治療をすることができます。だから新卒社員にも、将来のために今から健康管理やスポーツをやりなさいと言っています」(櫻井さん)。
同社は、会社をスタートさせた頃から「健康」「教育」「環境」は社員のために必要不可欠な3要素であるとして活動に注力してきたそうです。この考え方は、元気に仕事や生活ができる“健康寿命”を延ばすことにも通じており、健康管理やスポーツの実践は、絆が薄れている時代の中で、人間関係づくりや社風形成にも効果があると強調します。
「中小企業の経営は、融和と共栄が大切。このことを念頭に置きながら、ステークホルダーの皆様と一緒になって、社会に貢献できることをしていきたいです」(櫻井さん)。

年間30以上の様々なスポーツイベント実践し、企業をあげた取組を進める株式会社シンカーミクセル。今後も広い視野と高い目線で、スポーツや健康増進に取り組む社員と企業を応援していく活動の継続が期待されます。


【Vol.5】楽しく歩くことを日常に取り入れ、 身体を動かす習慣を定着

2023年2月10日

【お話しいただいた方】
山本光学株式会社
東京支店 支店長 村瀬弘幸さん
スポーツ事業部 事業部長 鳥谷好孝さん

山本光学株式会社が実施する『バーチャルウォークイベント』(以下『歩数イベント』、という。)は、活動量計を持ってデータを送信できれば、全国どこにいても参加できるのが魅力です。
2015年から8年連続で「東京都スポーツ推進企業」の認定を受け、従業員の皆さんが、楽しみながら歩数を競い合う取組や、ラジオ体操、階段エクササイズの奨励、アスリート支援などの活動をご紹介します。

企業紹介
110年続く日本のアイウェアメーカー

山本光学株式会社は、1911年の創業以来、「目を護る」製品を開発してきた企業です。
現在は、働く人々の安全を護る商品と、スポーツギアの2つブランドを展開し、多様な眼鏡、レンズを送り出しています。スポーツギア商品は、さまざまな分野で活躍するアスリートたちの要望に応えて開発され、スイミングやスノースポーツ、ダート競技などの幅広い分野の“スポーツを愛するすべての人”に選ばれている製品です。
同社では、事業活動を通じて、企業の理念である「人々の心の豊かな生活文化を創造し社会に貢献する、快適創造企業」の実現を目指しています。

山本光学株式会社インタビューに応えていただいた村瀬弘幸さん(左)と鳥谷好孝さん(右)

活動の背景・経緯
ラジオ体操、階段エクササイズで健康配慮

「弊社はスポーツ用品を扱う企業として、そもそもスポーツに興味を持つ従業員が多いのが特徴です。健康経営に取り組む前から、会社でも積極的に部活動を支援したり、始業前のラジオ体操や本社ビルでの階段の上り下りといった“体を動かすこと”を推奨してきました。」と話すのは東京支店 支店長の村瀬さんです。

山本光学株式会社 東京支店 支店長 村瀬弘幸さん山本光学株式会社 東京支店 支店長 村瀬弘幸さん

「本社は6階建ての自社ビルで、各フロアーには階段を使って1階上がるごとに3kcal、下ると2kcal消費するといったことをわかりやすく表示しています。東京支店はビルの8階にあるので、階段利用はなかなか進みませんが、昼食を食べた後は階段を使おうかといった意識が芽生えたのは確かです。」と“階段エクササイズ”の効果を説明したのはスポーツ事業部の鳥谷さんです。

山本光学株式会社 スポーツ事業部 事業部長 鳥谷好孝さん山本光学株式会社 スポーツ事業部 事業部長 鳥谷好孝さん

もともと運動に取り組む習慣があったことから、健康経営に取り入れることになった同社。そのきっかけは、東京支店の移転にありました。
「以前、湯島にあった東京支店は、現在の文京区後楽のオフィスビルに移転することになりました。このビルに入居していた健康機器メーカー様の案内で、2018年に全社で健康経営プログラムを導入しました。翌年には『歩数イベント』を実施。以来継続して実施しており、2022年で計8回目の実施となります。」(村瀬さん)

社内でのラジオ体操の様子社内でのラジオ体操の様子

階段エクササイズでの表示階段エクササイズでの表示

活動紹介その1
健康経営プログラムを導入、歩数イベント参加へ

『歩数イベント』とは、歩数計とアプリを使用したバーチャル(仮想空間)のウォーキングイベント。イギリスやドイツなどのテーマをコースごとに設定し、歩くことを疑似体験できるゲーム感覚で参加できる『歩数イベント』です。
現在、同社では従業員間で歩数を競い合っていますが、イベント導入前は、試験的に幹部社員だけで実施して検証したそうです。
「いきなり従業員を対象にした活動に広げることもできないため、まずは、少人数から始めて、手応えを得てから従業員の参加を募りました。2022年12月現在で全従業員の約6割の150名ほどが参加する社内イベントへと拡大しています。」(鳥谷さん)。
『歩数イベント』の参加者には活動量計を配布し、各事業所に設置している測定機を使って歩数データを読み取ります。データは運営会社に送信・集計され、ホームページ(マイページ)に参加者の現在地や順位などが表示される仕組みです。
「社員は名前ではなく愛称で登録しているので、ランキング上位者が誰だか、分からないように工夫しています。」(鳥谷さん)

インタビューの様子インタビューの様子

活動紹介その2
歩いて徳島巡り、260万歩を超える

第1回目『歩数イベント』の沖縄編は、那覇空港から辺戸岬までの250Kmを357,137歩で完歩するコースで、参加者116名中、完歩者を64名出す好結果となったそうです。
2022年5月~7月に行われた第7回の『歩数イベント』では、同社の工場がある徳島編で実施したとのこと。コースの設定は、鳴門の渦潮から大歩危小歩危(おおぼけこぼけ)までを歩くコースで、5月9日から7月1日までの54日間で、282.8kmを404,000歩で完歩できるコース。
「このときの1位は徳島工場に勤務する方になりまして、91日間で266万歩、1日平均約3万歩も歩いた計算になります。どうしてこれほど歩けたのか、本人に聞いてみると、1時間早く起きて歩いていたそうです」(鳥谷さん)。
1時間たっぷり、早歩きで歩けば距離にして6km、約8,000歩程度は歩ける計算になります。早起きして1時間歩き、昼間は工場の周りを1時間歩き、家に帰ってから1時間歩けば合計2万4000歩も歩けることができます。
「当然、社内でも歩きます。特に工場の場合は荷物持って運んだりすることは多いので、おそらく3万歩を毎日の日課として考えて歩いていたのかなと思います。」(鳥谷さん)。

徳島編開催告知徳島編開催告知

活動紹介その3
モチベーション向上、誰もが楽しめるイベントへ

同社は、『歩数イベント』参加者の上位3名を表彰し、賞品を進呈していますが、
「他にも部署ごとに表彰するグループ賞を設けたり、飛び賞を設けて開催回数やキリのいい数字の順位の参加者を表彰したりと、みんな楽しく参加しやすいように工夫して実施しています。」(鳥谷さん)
上位を狙いたいけれども、表彰されるメンバーが決まってしまっては楽しくない。マイペースで歩きたい人もいる中で、飛び賞などのサプライズを設定して飽きさせないようにする等の工夫でイベント内容を充実されているそうです。
「表彰された人やチームは全社に知れ渡るので非常に名誉なこと。本人たちのモチベーション向上にもなりますね。」(鳥谷さん)
『歩数イベント』は管理部総務課が主導で行い、データ集計やスコアなどは運営会社が行うため、普段の業務に負荷がかかるほど手間はかからず運営していとのことです。
「その他、実際やってみた気づきとして、参加者には説明不要のプログラムであることが望ましいですね。わかりやすい仕組みであることが大切です。」(鳥谷さん)

『歩数イベント』表彰内容『歩数イベント』表彰内容

今後の展開・メッセージ
「どうしたらそんなに歩けるの?」で社内活性化

同社では、イベント終了後に参加者にアンケートを取っています。
「目立ったところでは、例えば前年より健康診断の結果が良かったという方が10名ほど出ています。他にも、休日も歩いたり、走ったりすることを意識できてよかったとか、『歩数イベント』がなければこれだけ歩くことはないといった声が参加者から寄せられました。」(鳥谷さん)
見える効果として、コミュニケーション活性化につながったことが挙げられるそうです。
「コロナ禍で事業所間での交流が取りにくい中で、表彰されればお互いを知るきっかけにもなります。どうやって歩かれているのですか?といった自然な会話が生まれ、意見交換ができていることを効果として実感します。」(鳥谷さん)

スポーツを通じて体の健康そして心の健康へ

同社はスポーツ用品を取り扱う企業としてアスリート社員の雇用にも力を入れています。
「学生時代から当社製品に愛着を持っている方をアスリート社員として雇用していて、競技続行の傍ら、当社製品の発信を担っていただいています。」(村瀬さん)
多くのオリンピック選手やプロのスポーツ選手が同社の商品を使用し、活躍しており、そうした選手が本社や工場に訪問すると、従業員のモチベーションや製品に対する意識が確実に上がるそうです。
「体の健康もそうですけど、最近は心の健康がすごく大事になっていますので、『歩数イベント』もアスリートとの交流も、とても効果があることと思います。」(村瀬さん)

『歩数イベント』をはじめ、スポーツを通じた活動に企業を上げて前向きに取り組む山本光学株式会社。人の輪が広がる中で体の健康はもとより、心の健康度も上がっているようです。


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